「スタッフから教えられたこと」

 

◆10年勤めているスタッフの言葉

 

そのスタッフは同じ歯科医院で10年以上勤めている方です。仕事もすごくよくでき、明るく性格のよい方です。
常々気になっていたことを聞く機会があったので聞いてみました。それは「同じ職場でずーっと働いていて、飽きてこないのか」ということです。

自分の予想では、「もう飽きちゃってますよー」みたいな軽いノリの答えかなと思っていたけども、それとは違いました。
そのスタッフの答えは
・自分と接する中で患者さんが笑顔になること、見てもらえてよかったと、言ってくれることがうれしい、と。

・ずーっと来ていた患者さんが、ぱったり来なくなった。心配だと。

・自分の人生の中でこれからもここで働けたらいい。
ハッとさせられました。

 

◆歯科医師の臨床ステージ

 

臨床家としてのステージは以下のように進んでいくかと思います。

①始めは無我夢中。技術も未熟で一つ一つの処置で精一杯。

②だんだん口腔内全体の状態を把握できるようになる。その上での診断と治療。

③口腔内の経年変化をとらえた、歯周病の進行予測と欠損範囲の拡大予測ができるようになる。その上での診断と治療。

④患者さんの個性、社会的背景を踏まえた、本当に患者さんの求める治療。

⑤生涯に渡る口腔の健康のサポート
自分は⑤までを目指しつつ、③④を必死に実践しているところだと思います。

臨床家としてのステージはどんどんステップアップしていきます。
その中で臨床の師匠である若松宏幸先生の言葉をふと思い起こします。

 

◆「歯を診る前に、人を診よ」「患者さんの望むことをする」

 

「歯を診る前に、人を診よ」「患者さんの望むことをする」
その言葉自体は先生の口から何年も前から聞いていました。ただその言葉が、臨床を真剣に考え、技術を身につけ、どんどんできることが増えてくると、またその意味合いが変わって聞こえてきます。
臨床経験を積めばどんどんできることが増えてきます。どんどん臨床家としての自我が目覚めてきます。臨床家としてしたいことが増えてきます。そうすると、患者さんを置いてきぼりでDr主体の治療になりがちです。そんなこと当たり前だよと思っていたその言葉も、自分の臨床がレベルアップしていくと、その本当の意味合いが変わって来ました。
つまり、「(歯科医師として多くの高度な技術を駆使できる様になり、その技術を使って)歯を診る前に、(困っているその自分の眼の前にいる)人を診よ。」「(高度な技術を用いて患者さんを治せる様になったが、本当に)患者さんの望むことをする」

そういう、行間が見えてきたということです。KISWの安田耕先生が、若松先生の言葉には裏がある(=本当の意図がある)と言っていたことも脳裏に蘇ります。

 

◆患者さんと共にあるということ。

冒頭に示したそのスタッフの言葉は、自分に突き刺さりました。
きちんと、患者さん、その人自身を見ていること。
自分の人生を、その医院・患者さんとの人生の中で考えている。

この方は、若松宏幸先生の言葉を吸収して、もっと大きく視野を持ち患者さんを見て、接しているんだなと、衝撃を受けました。
自分の方が多くの気付きを、この方から教えてもらいました。