理事長ブログ
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【歯学部生・若手歯科医師へ】根管治療の前に見直したい、歯の形と根管のつながり
根管治療がうまくなりたい。そう考えたとき、ファイルや根管充填の方法に関心が向くと思います。私が若い先生に大切にしてほしいのは、処置を始める前に、その歯の中の形を考えることです。
教科書の図と、目の前の歯を見比べてみる。どこが同じで、どこが違いそうか。その疑問を持って診療に臨むと、解剖の勉強も具体的になります。
根管の本数を決めつけない
上顎第一大臼歯の近心頬側根について、Weineらは日本人の抜去歯を調べ、複数の根管を持つ形態を報告しています。[1] 一本の歯根に、根管も一本とは限りません。ただし、抜去歯の研究で得られた割合を、そのまま目の前の患者様に当てはめることはできません。
下顎前歯についても、Kartalらの研究は根管形態の多様性を示しています。[2] 小さな歯だから単純だろう、と考えてしまわないようにしたいですね。
解剖を学ぶ目的は、平均的な本数を答えられるようになることだけではありません。別の形もあり得ると考えながら、実際の所見を確かめるためです。
入口の形だけでは、根尖側は分からない
下顎第二大臼歯のC字型根管を調べたFanらの研究では、根管の断面形態が歯根の途中で変化し、根管口の形から中央部や根尖部の形を予測できないことが示されました。[3]
これは、入口が見つかった後も、その先がどのようにつながっているかを考える必要がある、ということです。C字型根管を、単に「遠心根に多い変わった根管」と覚えると、この特徴が伝わりません。
若い先生には、読んだ解剖図を一度、自分の手で描いてみることを勧めたいです。どこで分かれ、どこで合流するのか。描けない部分があれば、そこが次に調べるところです。これは勉強の進め方としての提案ですから、最初からきれいな図にする必要はありません。
画像を増やす前に、知りたいことを整理する
CBCTを撮れば、すべての疑問が解決するわけではありません。AAEとAAOMRの2025年改訂版に関する公式発表でも、一律の撮影ではなく、臨床上の必要性、既存の画像、患者様の状況に応じて選択することが示されています。[4]
相談するときには、「根管の形が分かりません」だけで終わらず、どの所見をどう解釈し、どこに迷っているのかを伝えてみてください。追加の検査で何を確かめたいかが整理できると、指導する側とも話がかみ合います。
分からない形に出会ったとき、分かったつもりで進めないこと。必要なところで相談できること。私は、そうした姿勢も根管治療を学ぶうえで大切にしてほしいと思います。次の症例を振り返るときには、使った器具に加えて、その歯の形についても話してみましょう。
引用・参考文献
[1] Weine FS, Hayami S, Hata G, Toda T. Canal configuration of the mesiobuccal root of the maxillary first molar of a Japanese sub-population. Int Endod J. 1999;32(2):79–87. DOI: 10.1046/j.1365-2591.1999.00186.x. https://doi.org/10.1046/j.1365-2591.1999.00186.x 閲覧日:2026年10月17日。
[2] Kartal N, Yanikoğlu FC. Root canal morphology of mandibular incisors. J Endod. 1992;18(11):562–564. DOI: 10.1016/S0099-2399(06)81215-X. PMID: 1298794. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1298794/ 閲覧日:2026年10月17日。
[3] Fan B, Cheung GS, Fan M, Gutmann JL, Bian Z. C-shaped canal system in mandibular second molars: Part I—Anatomical features. J Endod. 2004;30(12):899–903. DOI: 10.1097/01.don.0000136207.12204.e4. PMID: 15564874. https://hub.hku.hk/handle/10722/66107 閲覧日:2026年10月17日。
[4] American Association of Endodontists. AAE and AAOMR Release Joint Position Statement on the Use of CBCT in Endodontics. 2026-01-14(2025年改訂版に関する公式発表). https://newsroom.aae.org/press-releases/aae-and-aaomr-release-joint-position-statement-on-the-use-of-cbct-in-endodontics/ 閲覧日:2026年10月17日。