理事長ブログ

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10232026
臨床・症例について

【若手Dr向け】歯周再生療法を学び実践する前に――歯周基本治療と再評価を、チームの共通言語に

こんにちは。医療法人志結会おざき歯科医院、理事長の尾崎亘弘です。

歯周組織再生療法の講演を見ると、材料や術式に関心が向きますよね。
若手の先生方が、新しい治療を学びたいと思う気持ちは大切です。
そのうえで、手術の前に、どのような治療と判断があったかにも目を向けてみましょう。

今回は、歯周基本治療と再評価について、Dr✖️DH✖️DA(Re)✖️消毒滅菌のチームで何を共有したいかを考えます。

1.基本治療は、手術までの待ち時間ではない

日本歯周病学会のガイドラインでは、原因への対応とプラークコントロールを歯周治療の基盤とし、基本治療後も必要な部位には、適応を考慮して外科治療を行う流れが示されています。[1]

欧州歯周病学会のガイドラインも、患者様の口腔衛生やリスク因子への対応、歯肉縁下の処置、その後に残った問題への対応という段階的な治療を示しています。[2]

ここから私が大切にしたいのは、最初から手術を前提にして、基本治療を通過するだけの時間にしない、ということです。
治療への反応を確かめながら、次に何が必要かを考える時間にしたいと思います。

例えば、患者様がセルフケアを続けにくいなら、単に「もっと頑張ってください」と伝える前に、何が難しいのかを伺いたいですね。
方法がわからないのか、生活の中に時間をつくりにくいのか。説明を聞けたことと、実際に続けられることを分けて考えたいです。

2.再評価では、変わったことと残ったことを見る

再評価で共有する情報は、歯周ポケットの深さだけではありません。
出血、口腔衛生状態、動揺、エックス線画像なども含め、歯周組織の状態を評価する必要があります。[1]

私は、その結果を「よくなりました」で終えず、最初の状態と比べて何が変わり、どの部位に何が残っているのかを説明できることが大切だと思います。

数値を並べるときも、検査日、対象の歯や部位、行った治療を一緒に確認する。
別の時点の情報を混ぜたままでは、相談する相手も判断しにくいですよね。

また、患者様の実感も聞いてみたいです。
出血についてどう感じているか、日常のケアで何に困るか。
検査結果と本人の言葉を、それぞれの情報として記録することを提案します。
これをすることで、患者様自身が検査結果を自分ごととして捉えることができるようになります。

再生療法を検討する際も、再評価で残った問題が、どのような追加治療を必要とするのかを考えたいと思います。特定の材料を使いたいという気持ちを先に置かず、症例に合う判断の理由を言葉にしたいですね。

3.歯科衛生士と、同じ問いを持つ

チームで症例を振り返るなら、私は
・「何を目標にしていたか」
・「何が改善するか」
・「予後はどの程度か」の三つを、共通の問いにしてみたいです。

歯科医師は診断と治療計画の理由を説明し、歯科衛生士はケアの経過や患者様が困っていた点を共有する。
互いの記録を、次の判断につながる形で読みたいと思います。

ここで、改善が十分でなかったことを、担当者や患者様の努力不足と決めつけないようにしたいですね。
どの情報が不足しているか、方法を調整する余地があるかを考える。
疑問を残したまま、予定だけを先へ進めない姿勢が大切だと思います。

架空の症例検討なら、同じ検査結果を見て、それぞれが気になった点を挙げる練習もできます。
すぐに結論をそろえるより、見ていた部位や情報の違いを確かめる。その時間が、相談の内容を具体的にすると思います。

若手の先生には、治療方針だけでなく、「まだ判断できない理由」も整理して相談してほしいです。
不明点を示せることは、次に必要な情報を集める出発点になります。

振り返りで決めたことは、次回までに誰が何を確認するかを書いておくとよいですね。「経過を見る」だけでは、人によって思い浮かべる内容が違います。患者様に伺うこと、資料をそろえること、歯科医師が検討することを分けておきたいですね。

4.患者様と共有するのは、手術名だけではなく、予後まで

患者様に次の治療を説明するときは、ここまでで改善したことと、残っている課題を、まず伝えたいと思います。
そのうえで、追加治療を提案する理由や他の選択肢、負担について話し合う。
治療名だけでは、その方が判断する材料は足りません。

「再生」という言葉だけから、必ず元どおりになると受け取られないよう、期待できることと限界を説明したいですね。
経過を見ながら方針を見直す可能性も含めて、患者様と確認していくことが必要だと思います。

患者様にも、次の受診で何を確かめる予定かを伝えておきたいです。
治療が進んでいるのか不安になったときに、現在の段階を説明できること。チーム内で言葉をそろえる意味があります。

学会や研修で症例を見るときも、術前と術後の写真だけでなく、基本治療の内容、再評価の結果、治療を選んだ理由をぜひ追ってみてください。

技術を学ぶことと、適応を考えること。
その両方を育ててこそ、学んだ治療を患者様にどう役立てるかが見えてきます。
基本治療と再評価を、チームで丁寧に言葉にしていきましょう。

引用・参考文献

[1] 特定非営利活動法人日本歯周病学会編『歯周治療のガイドライン2022』2022年。歯周治療の進め方、再評価、継続管理に関する項目を参照。本文PDF。閲覧日:2026年10月15日。

[2] Sanz M, Herrera D, Kebschull M, et al. Treatment of stage I–III periodontitis—The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2020;47(Suppl 22):4–60. DOI:10.1111/jcpe.13290。PMID:32383274。PubMed。閲覧日:2026年10月15日。