理事長ブログ
Blog
【歯学部1・2年生へ】基礎科目を、患者様の診療につなげて考えてみませんか
歯学部に入ったばかりの皆さんは、覚えることの多さに戸惑うことがあるかもしれません。歯の形や組織の名前を勉強しながら、「これは診療でどう使うのだろう」と感じることもあると思います。
私は、その疑問を持ったまま学んでほしいと思っています。初めからすべてを理解しようとするより、授業で習ったことと、診療室で目にすることを少しずつ結びつけてみてください。
歯の名前を覚えたら、形にも目を向ける
解剖の図を見たら、名称を隠して説明してみる。どこまで自分の言葉で話せるでしょうか。名前は思い出せても、隣の組織との位置関係を説明しようとすると、手が止まることがあるかもしれません。
そこで教科書に戻って確かめる。その往復を、面倒なことだと思わずに続けてほしいです。
診療見学では、処置の手順だけでなく、先生が何を見ているかにも注目してみてください。「今の所見から、何が分かるのでしょうか」と、診療を妨げない時間に聞いてみるのもよいと思います。
見学で疑問が一つ見つかれば、それを次の勉強の題材にできます。知識が足りなかったことを隠すより、何を調べればよいかが分かったことを大切にしてほしいですね。
病気と一緒に、患者様の暮らしを考える
WHOは、う蝕、歯周病、歯の喪失、口腔がんなどを主な口腔の健康問題として挙げています。また、糖の摂取、喫煙、飲酒などの要因だけでなく、必要な医療を受けられるかという社会的な条件にも目を向けています。[1]
病名と治療法を覚えることに加えて、その方がどのように暮らしているかを考える。歯科を学ぶうえで、忘れずにいてほしい視点です。
たとえば、予防について説明する場面を想像してみてください。患者様が困っているのは、方法が分からないことなのか、時間をつくれないことなのか。こちらが説明したいことだけを話しても、疑問が残るかもしれません。
学生のうちから、患者様の言葉を最後まで聞くこと、分からない言葉をそのままにしないことを意識してみましょう。専門用語を使わずに説明する練習をすると、自分の理解が曖昧なところにも気づけると思います。
新しい技術は、できることの範囲まで調べる
AIやデジタル機器への関心も、大切にしてほしいです。ただ、便利そうだと感じたところから、もう一歩調べてみてください。どの場面を助ける技術なのか。何を使って評価したのか。従来の方法との違いは何なのか。
遠隔歯科医療についても、技術への期待と研究で確かめられたことを分けて読む必要があります。Estaiらの総説は2018年に掲載されました。採用した11研究を検討した結果、臨床での有効性、費用対効果、長期的な利用については、なお結論が十分でないとしています。[2] この総説だけから「地域間の医療格差を解消できる」とは言えません。
もちろん、これは当時の研究を集めた総説です。今の状況を判断するには、その後の研究も調べる必要があります。発表年を見ながら読む習慣も、早い段階で身につけてほしいと思います。
基礎科目も、新しい技術も、患者様の診療を考えるときに必要になります。次に教科書を開くときには、見学中に気になったことを一つ思い出してみてください。そこから先生や先輩と話をすると、勉強する内容が少し具体的になるのではないでしょうか。
引用・参考文献
[1] World Health Organization. Oral health. 2025年3月17日. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/oral-health 閲覧日:2026年10月17日。
[2] Estai M, Kanagasingam Y, Tennant M, Bunt S. A systematic review of the research evidence for the benefits of teledentistry. J Telemed Telecare. 2018;24(3):147–156. DOI: 10.1177/1357633X16689433. PMID: 28118778. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28118778/ 閲覧日:2026年10月17日。