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9262024
日々のこと

世界の歯科医療と、日本の歯科医療 ー日本の歯科医師が世界のためにできることー

志結会に、歯学部1年生がアルバイトに来ています。歯科医師として臨床家として、世界にむけてどのような活躍できるのか伝えたくて今回のブログを作成します。

はじめに

歯科医療は、国ごとの経済的背景や医療体制によって大きく異なります。

日本では、国民皆保険制度により高品質な歯科医療が広く提供されていますが、世界には歯科医療へのアクセスが不十分な地域も多く存在しています。

日本の歯科医師が国際的な歯科医療の向上に貢献できる可能性は大きく、本ブログでは、世界と日本の歯科医療の比較を行い、日本の歯科医師が世界のためにどのような役割を果たせるのかを考察します。

世界の歯科医療の現状

1. 歯科医療へのアクセス格差

世界保健機関(WHO)によると、世界には30億人以上が効果的な口腔ケアを受けられない状態にあります。

特に低所得国や発展途上国では、歯科医療に対するアクセスが著しく制限されており、歯科医師の数が少ないことや、治療費が高額であることが主な原因です。

例えば、アフリカでは1万人に1人以下の歯科医師しかいない地域もあり、基本的な口腔ケアすら受けることが難しい状況です。

2. 高所得国と低所得国のギャップ

高所得国では、虫歯や歯周病の治療、予防において高度な技術が提供され、口腔ケアへの関心も高まっています。

アメリカや欧州諸国では、定期的なメンテナンスや予防歯科が重視され、矯正歯科やインプラント治療の需要も増加しています。

一方、低所得国では、依然として虫歯や歯周病が主要な口腔疾患であり、予防よりも応急処置や抜歯が主流です。

3. 国際的な歯科医療支援の取り組み

国際的には、WHOやNGOが中心となり、低所得国への歯科医療支援活動が行われています。

先進国の歯科医師がボランティアとして現地での診療や技術指導を行うケースも増えています。

日本の歯科医療の特徴

1. 国民皆保険制度

日本の歯科医療は、国民皆保険制度に支えられ、ほぼ全ての国民が手頃な価格で質の高い歯科治療を受けられる環境にあります。

予防歯科の普及も進み、定期検診やクリーニングの重要性が広く認識されています。特に虫歯治療や歯周病治療に関しては、世界的にも高い水準を誇ります。

2. 高度な技術と研究

日本の歯科医療は技術的にも優れており、インプラント治療や歯科用材料の開発においては、世界的に高い評価を受けています。

また、デジタル技術の導入も進んでおり、CAD/CAMシステムを活用した補綴物の製作や、3Dプリンターを用いたインプラントガイドサージェリーなどの手術支援技術が発展しています。

さらに、歯科研究分野では、再生歯科医療における歯周病領域や口腔癌の研究においても重要な貢献を果たしています。

3. 歯科医師の質の高さ

日本の歯科医師は、教育課程を通じて厳格なトレーニングを受けています。

歯学部での学びに加え、臨床研修が義務付けられており、実践的な経験を積んだ上で歯科医師免許が付与されます。

このようなシステムにより、日本の歯科医師は技術と知識において高いレベルを維持しており、海外でもその技術が認められています。

日本の歯科医師が世界のためにできること

1. 技術提供と教育支援

日本の歯科医師が世界に対して果たすべき重要な役割の一つは、技術の提供と教育支援です。特に、歯科医療が遅れている地域に対して、日本で培われた高度な技術や知識を提供することは大きな貢献となります。

例えば、ボランティア活動を通じて現地の歯科医師に最新の治療技術を教えたり、大学や医療機関と連携して研修プログラムを提供することが考えられます。

また、日本の歯科医師が海外に渡り、現地の歯科医療機関で実際の診療を行うことも重要です。

こうした活動は、患者への直接的な貢献だけでなく、現地の歯科医師との知識交換や共同研究の機会にもつながります。

2. 遠隔医療の推進

遠隔医療は、歯科医師が現地に赴くことなく、技術支援や診療支援を行う方法として注目されています。

日本では既に遠隔診療システムが存在しており、これを活用することで、歯科医師が不足している地域に対しても、適切な指導や治療計画の提供の可能性があります。

また、AI技術を活用した診断システムを導入することで、地域医療の質を向上させることができるでしょう。

3. 材料や技術の提供

日本は歯科材料の研究開発においても先進的であり、特に歯科用セメント、合成樹脂、再生医療薬品などの分野では世界的に高い評価を受けています。

こうした高品質な材料を低所得国に提供することで、現地での治療水準を向上させることができます。

また簡易診療設備の開発と提供も、歯科医療へのアクセス改善に貢献するでしょう。

結論

日本の歯科医師は、国内外で高い技術と知識を持って活動していますが、その技術を世界に還元することで、グローバルな歯科医療の向上に寄与することができます。

特に、技術提供、教育支援、遠隔医療の推進などを通じて、歯科医療の格差を縮小し、世界中の人々が適切な口腔ケアを受けられるようにすることが重要です。

今後、日本の歯科医師が果たすべき国際的な役割は、ますます重要性を増していくと考えられます。

歯科医師として成長するときにぜひ、発展途上国へのブラッシングや、発展途上国での歯科治療などの歯科国際ボランティアも行い、国際貢献にも寄与して欲しいと願っています。

もし歯学部生、歯科医師として国際貢献に興味のある方は、ホームページより尾崎亘弘までご一報ください。一緒に国際歯科ボランティアに参加しましょう!

 

参考図書・文献・ウェブサイト

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