理事長ブログ

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8312024
日々のこと

サイナスリフトを学ぶ若い先生へ。手技の前に考えたいこと

理事長の尾崎亘弘です。サイナスリフトを学びたい若い先生には、手術の手順と一緒に「なぜ、この患者さんに必要なのか」を考えてほしいと思います。できる手技が増えることはうれしいものですが、手技を選ぶ理由まで説明できるようになりたいですね。

骨を増やす方法だけで考えない

サイナスリフトは、上顎の奥歯の部分で、上顎洞の底の部分に骨を増やし、インプラント治療に必要な骨の高さを補うための処置です。上顎洞の側方から入る方法や、歯があった側からアプローチする方法などがあります。[1]

骨の高さが限られている場合には、短いインプラントを使う方法も比較の対象になります。2018年のITIの合意文書では、一定の条件のもとで、短いインプラントが骨造成を避けるための選択肢になり得るとされています。どの症例でも置き換えられる、という意味ではありません。[2]

研究結果は、対象の条件と一緒に読む

2024年に報告された比較試験では、上顎の奥歯の骨の高さが5~7mmの患者さんを対象に、長さ6mmのインプラントと、サイナスリフトを併用した長いインプラントを比較しています。10年後の観察では、生存率などに統計学的に明確な差は認められませんでした。[3]

ただし、長期の再診に参加しなかった方もいますし、対象となった骨の条件や補綴方法も限られています。「差が出なかった」ことだけで、すべての患者さんに同じ結果を期待することはできません。若い先生には、結論だけでなく、どのような患者さんを、どれくらい追跡した研究なのかも読んでほしいと思います。[3]

実習では、判断と相談の場面も学ぶ

上顎洞を扱う手術では、上顎洞炎や感染などの合併症も考える必要があります。2014年のコクランレビューでも、対象を限った比較で、短いインプラントに比べサイナスリフトを伴う治療の合併症が多いことが示されています。ただし、このレビューは古く、長期成績の判断にはその後の研究も合わせて読む必要があります。[1]

僕は、残っている骨の高さを一つ測っただけで、術式を決めるような覚え方は避けてほしいと思っています。検査で何を確認し、どの点が難しいと判断されたのか。指導を受ける先生に治療計画の根拠を聞き、自分の言葉で説明し直してみましょう。

手技を学ぶときには、予定どおりに進まなかった場合の相談先や、治療計画を見直す判断も確認しておきたいところです。ブログや動画で流れを知ることと、患者さんを担当できることの間には、実習や指導を受けて確かめることがたくさんあります。

見学を希望される先生は、医院へお問い合わせください。受け入れの可否や見学内容は個別にご相談となります。実際の治療を通じて、手技だけでなく、患者さんへの説明や判断の過程にも関心を持っていただければと思います。

参考文献

  1. Esposito M, Felice P, Worthington HV. Interventions for replacing missing teeth: augmentation procedures of the maxillary sinus. Cochrane Database Syst Rev. 2014;(5):CD008397. doi:10.1002/14651858.CD008397.pub2. 出典
  2. Papaspyridakos P, et al. Survival Rates of Short Dental Implants (≤6 mm) Compared with Implants Longer than 6 mm in Posterior Jaw Areas. ITI Consensus Statement. 2018. 出典
  3. Thoma DS, et al. Randomized controlled multi-centre study comparing shorter dental implants (6 mm) to longer dental implants (11–15 mm) in combination with sinus floor elevation procedures: 10-year data. J Clin Periodontol. 2024;51(4):499–509. doi:10.1111/jcpe.13954. 出典

2026年10月18日 文献と記載内容を見直しました。