理事長ブログ
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いつもの歯科材料が届かないときに、診療を止めないための備え
理事長の尾崎亘弘です。
歯科医院では、材料が一つ届かないだけでも、予定していた処置を見直すことがあります。患者様に来院いただいてから困ることのないように、普段の発注や在庫の確認も、診療を支える仕事として考えておきたいと思います。
世界情勢と聞くと、日々の診療とは離れた話に感じるかもしれません。ただ、手袋や診療材料が医院へ届くまでには、原料の調達、製造、輸送があり、その過程は海外ともつながっています。遠い国で起きたことが、身近な納期に関わる可能性はあります。
経済産業研究所が公開している「通商白書2026」の解説セミナー議事録では、医療用の手術用手袋を例に、輸入先だけでなく、その先の原料供給も含めて考える必要性が説明されています。[1] これは供給の仕組みを理解するための資料で、当院で使う製品が不足すると予告するものではありません。実際の納期は、製品ごとに取引先へ確認する必要があります。
棚にある数と、診療に使える数
備えとして、すぐに在庫を増やしたくなることもあると思います。しかし、材料には使用期限があり、保管場所にも限りがあります。必要以上に買って、使わないまま期限を迎えてしまっては困ります。
先に確かめたいのは、「これが届かなければ、どの処置ができなくなるか」です。そのうえで、現在の数量、普段の使用量、納期、使用期限を整理します。規格やサイズが違えば、同じ品名でも必要なものの代わりにはなりません。
例えば、箱は十分に残っていても、次の処置に必要なサイズだけが少ないことがあります。棚全体を見て「まだある」と判断せず、実際に何に使うものなのかまで確認する。発注を担当する人と、診療で使う人の情報が合っていることが大切です。
使わずに残っている材料にも、理由があるはずです。診療の予定が変わったのか、保管場所が分かりにくかったのか、使い方を共有できていなかったのか。数量だけでなく、その理由まで聞くことで、次の発注を見直せます。私は、現場で気づいたことを話せる関係も、在庫管理の一部だと考えています。
代わりの材料を決めるとき
いつもの製品が入らない場合には、代替品の検討が必要になります。ただ、似た名前や用途の製品でも、操作方法や使用条件が同じとは限りません。
添付文書や製造販売業者の情報を確認し、使用目的、対応する機器、保管条件、準備や操作の違いを確かめる。その製品を実際に使う歯科医師とスタッフが、変更点を理解してから使うようにしたいと思います。これは、発注担当者だけで決める仕事ではありません。
厚生労働省の「医療機器の安定供給について」には、供給に関する通知や企業の公表情報がまとめられています。[2] 公的な情報を確認したうえで、医院で使う具体的な製品名と規格を伝え、納期や供給状況を取引先に問い合わせます。
情報を確認した日も残しておきたいところです。先週の回答と今週の状況が同じとは限りません。「いつ、誰に、何を確認したか」が分かれば、担当者が休みの日にも引き継ぎやすくなります。返事がまだない事項は、未確認として残し、次に確認する担当者を決めます。
患者様の診療を優先する
材料の都合だけで、診療の方針を決めることはできません。十分な確認や準備ができない場合は、予定していた処置をそのまま進めてよいか、患者様の状態を踏まえて判断します。変更が必要であれば、理由と選択肢を説明し、ご本人の希望も伺います。
また、取引先には、急に困ったときだけ連絡するのではなく、普段の使用量や今後の予定を伝えておくことも必要だと思います。医院側の事情が伝わっていれば、相談も具体的になります。
世界情勢を正確に予測するのは難しくても、医院の中でできることはあります。まずは、日常的に使う材料について、数量と期限を確かめ、供給が止まったときの影響を整理する。確認する担当者と連絡先を決めておく。
診療室で患者様に向き合う時間は、こうした準備によって支えられています。目立つ仕事ではありませんが、安心して診療を続けるために、丁寧に取り組んでいきたいと思います。
引用・参考資料
[1] 経済産業研究所(RIETI).サプライチェーンリスクの高まりと新興国を巡る競争激化:通商白書2026.2026年7月23日開催セミナー議事録.講演:依田圭司.議事録はRIETI編集部の責任で編集.原資料(2026年10月17日確認)
[2] 厚生労働省.医療機器の安定供給について.随時更新ページ.原資料(2026年10月17日確認)