理事長ブログBlog
歯学部生・若手歯科医師にとっての「一人前の歯科医師」とは? -マズローの欲求5段階説からのアプローチ
初めに
歯学部生、若手歯科医師向けに、「一人前の歯科医師ってなんだろう?」に答えます。
このブログを読んでくれている方に、歯学部生、研修歯科医、若手歯科医師のが多いようです。
今回は、特に、開業医志向の先生や、臨床志向の先生、また仕事と生活のバランスを取りたいと願う先生に向けた内容になります。
私自身40歳を超えて、これから人生折返し後半戦のスタートを切りました。
歯科医師、人生楽しいなと思って日々過ごしています。
勉強会や大学に出入りする、現在の立場上、多くの勤務医や、開業したばかりの先生、歯学部生、研修医と話すことがあります。
よく耳にするのは「早く一人前の歯科医師になりたい」という声です。
しかし、「一人前」とは具体的にどういう状態を指すのでしょうか。
答えは多岐にわたり、ハッキリとした定義がないことから、中途半端な状態での診療やキャリアの困難に直面する先生も少なくありません。
このブログを読まれている方の中にもそう思う方が多くいらっしゃると思います。
これまでの20年近い歯科人生の中で、豊かな人生を歩んでいる先生と、そうでない先生と多く出会ってきました。大きな声では言えませんが、中途半端で、人生困ったことになっている先生も多く見ています。
せっかくの1度きりの人生をあえて、中途半端や人生困ったことになってもいいって人はそのままでもいいと思います。
でも、もし、、、
本当に自分の歯科医師人生を良くしたいと、思っている先生にはぜひよく読んで、自分の立ち位置と、これからの展望を自分なりに考えて見てほしいと思います。
そして、できれば、自分なりに紙に書き出してみてもらいたいと思います。
一人前の歯科医師とは??
それでは「一人前の歯科医師」とその先について、明確に答えていきたいと思います。
ちなみに、このブログは患者様も見ています。
患者様から見たら、なにを当たり前のことを、と思うことがほとんどだと思います💦
歯科医師にとって、一人前って?
まず、結論から。
超〜〜〜シンプルにいったら、
「自分の給料分以上の歯科治療が出来ている状態」
です。
一人前の社会人とは?
「人の手を借りずに、自分自身が生活していけること。」
生活でも人間関係でも。
そしてこれを歯科医師の視点で考えると、
「自分の給料分以上の歯科治療が出来ている状態」
これをもう少し詳しく社会人目線で見ていくと。
「(1)他の人の手を借りずに、(2)自分の給料以上、(3)自分自身で歯科診療ができる状態」です。
3つのポイントをそれぞれ見ていきます。
(1)他の人の手を借りずに治療:
上位ドクターからラバーダムかけているか?軟化象牙質取れているか、エンド三角が取れているか、細かいチェックを受けなくていいという状態です。
急患で来院された患者様にどのような対応が必要か自分自身が分かること。
初診の患者さんにどのような初期対応が必要か分かること。
自分の診た患者さん・配当患者さんについて、自分から治療計画を立てて、上位ドクターに自分からチェックをもらいに行ける状態。上位ドクターから「今日の〇〇さん治療どうなっているの?」って言われてのは、学生です。
(2)自分の給料以上の治療:
ここの観点が欠落している若手ドクターが非常に多いです。環境的に仕方のない部分もあります。
ドクターの歩合率は20%です(日本の大部分の歯科医院での歯科医師の歩合率は15〜25%の間です)。
つまり、給料として受け取る額を稼ぐには、その4〜6倍の治療サービスを提供する必要があります。
例えば、1000点分の治療をしたら、200点(つまり2000円)がドクターの給料になります。
もしあながた、20日勤務して月収50万円もらっているなら、1日あたり2.5万円もらっていますね。歯科治療サービスを1日で2.5万÷0.2=12.5万円分以上の仕事をする必要があります。
(3)自分自身で歯科治療ができる:
治療の大前提が、医療者として患者様を安心させられる対応、チーム医療を実践するスタッフとの対応ができることです。
☆患者様対応
誠実さ。本当に患者さまのことを考えられる。
☆スタッフ対応
一人では診療できません。一緒に働くメンバーのことを考えられえない歯科医師は、成功しません。
☆治療技術・知識
これはあって当然。
歯科医師国家試験出題基準の内容を十分理解している、
モデルコアカリキュラムの内容を理解し実践できる。
不安があるならとことん勉強したほうがいいです。
志結会は日本でトップレベルに、多くの勉強できる環境があります。時間に制限はありますが自主練もOKです。症例ディスカッションや症例相談をしています。
また形成・歯周外科治療の実技を日本最高レベルで習得する・またインプラント技術を習得し、その専修医・専門医を目指す推奨外部研修もあります。
☆歯科治療をするときに考える念頭におくべき3つのこと
(1)患者様のこと、(2)自分(自身の成長)のこと、(3)医院のこと。この3つのバランスも大切です。バランスが悪いと、結果的に患者様も含め周りに迷惑をかけ、最終的に自分にツケが回ってきます。。。
「一人前の歯科医師」に至る成長のステップとその先
つぎに、「一人前の歯科医師」に至る成長のステップとその先を考えていきます。
ここでは、マズローの欲求5段階説プラス1にそって考えていきたいと思います。
心理学者アブラハム・マズローが提唱した「マズローの欲求5段階説」です。
マズローの欲求5段階説は、人々の欲求がいくつかの階層から成り立っており、基本的な欲求を満たすことができたら、次の高次の欲求へと移行していくという理論を示しています。
歯科医師としての成長もこれに基本的になぞらえて考えることができます。
この欲求階層は以下の5つからできています。これにマズローが晩年提唱した6つ目を足して考えていきます。
1.マズローの欲求5段階説+1とは、
- 1.生理的欲求
- 2.安全の欲求
- 3.所属と愛の欲求
- 4.承認の欲求
- 5.自己実現の欲求
- 6.自己超越の欲求
になります。
マズローによれば、下位の欲求が満たされていない場合、上位の欲求を追求することは難しいとされます。
つまり、1に記されるの下位の欲求から満たしていくのが大切なんですね。
一般的には、以下のように説明されます。
- 1.生理的欲求:食事、水、睡眠などの基本的な生命維持に関連する欲求。
- 2.安全の欲求:物理的・経済的安全、健康、安定性に関連する欲求。
- 3.所属と愛の欲求:友情、愛、家族やグループとの関係に関連する欲求。
- 4.承認の欲求:自尊心、成果の承認、尊敬、評価を受けることに関連する欲求。
- 5.自己実現の欲求:個人の潜在能力を最大限に発揮し、自己の可能性を実現することに関連する欲求。
- 6.自己超越の欲求:他者に喜んでもらいたい、社会をより良いものにしたいなど、自分のエゴを超えて他者・社会のことを想う欲求。
これを歯科医師の成長として見てみます。
1.歯科臨床医としてのマズローの欲求5段階説+1とは
1.歯科医師としての生理的欲求
とりあえずの、水・食事、寝る場所がある状態です。歯科医師でここに困っている人はあまりいません。
しかし、開業医で開業が失敗に終わり(技術・知識の不足、体力・メンタルの不足により)、住むところがなく、破産し生理的欲求が脅かされるケースも何件か聞いたことがあります。
僕も歯学部を卒業したての時は、研修医の給料だけで一人で食べていけるように木造30年のアパートに暮らして、自転車通勤、スーパーの半額のお惣菜や学生食堂で、必死に生きていました。
2.歯科医師としての安全の欲求
冒頭に記した、
心身ともに健康に、安定した生活、給料が確保できる状態です。安全な場所・環境に自分を置けることです。
勤務医として、まず歯科医院など、歯科医療の現場に身を置くことになるでしょう。そしてそこで給料をもらうでしょう。それに足るだけの歯科診療ができる状態です。
「(1)人の手を借りずに、(2)自分の給料以上、(3)自分自身で歯科診療ができる状態」では、これを満たした状態です。
ここを実現するために、勉強をする。自主練をする。スタディーグループなどに参加する。
僕も大学院や勤務医時代、論文を夜遅くまで先輩と一緒に必死に勉強したり、なけなしの生活費・アルバイト費用から捻出して東京の形成実習のセミナーに参加したりしていました。
キーマンになるのは、具体的な現場のことを教えてくれる職場の先輩と、総合的なアドバイスをしてくれる院長・理事長です。
3.歯科医師としての所属と愛の欲求
友情、愛、家族やグループとの関係に関連する欲求を歯科医師としての生活にあてはめてみると、、、。
(1)歯科医院の中で、「一人前の歯科医師」として実績を出すことができ、認められて居心地がよい。
(2)歯科医院の中のメンバーと良好な関係を築き、医院の取り組みを実践し、貢献し、認められている。
(3)スタディーグループなどで症例相談、症例ディスカッションをして認められ、切磋琢磨できる環境がある。
(4)家族や仲間・友人と良好な関係を構築している。
歯科医院に勤務したら勤務医としてぜひここを十分に実践してください。ここに到達するのが一番大変ですが、勤務医として楽しくなるのが、このステージです。
キーマンになるのは、診療における幹部やリーダーへの貢献、専門分野や将来について相談に乗ってくれる院長・理事長です。
4.歯科医師としての承認の欲求
自尊心や、成果の承認、尊敬、評価を受けることに関連する欲求を歯科医師に当てはめてみます。
(1)組織で求められる以上の、自分の仕事でパフォーマンスを十分にだすことができ、周りからもその成果を承認してもらえている。
(2)歯科医院の中で、歯科医師として、歯科医院の課題解決に主体性を発揮して、他のメンバーからも尊敬されている。
(3)スタディーグループで発表し、その内容に関して承認されている。
(4)家族・多くの仲間友人との良好な人間関係が満たされて、承認されている。
3のステージを数年すると、結果が伴って4の段階に到達します。そうすると、一番エキサイティングな時期です。
キーパーソンは、医院での幹部仲間・後輩と院長・理事長です。後輩や統率するグループができることで指導力や人を動かす力が伸ばせられる時期です。また本当の意味での歯科医師人生をこれからどうするかを共に考えていくのが、院長・理事長です。
5.歯科医師としての自己実現の欲求
歯科医師として、個人の潜在能力を最大限に発揮し、自己の可能性を実現するってどんな状態かを考えてみます
(1)自分の得意分野を持ち、その分野に関しての歯科医療を十分実践できている状態。
(2)歯科医院の中で良いと考える自分の取り組みを実現し、歯科医療を実践出来ている状態(専門医、分院長、医局長、院長、独立)
(3)スタディーグループ・勉強会の中で、自分の臨床や研究を発表し続けられている状態。
(4)自分の欲しいものを物心両面から手に入れている状態。
キーマンは、組織の長、スタディーグループの長、院長・理事長です。自分の人生を、歯科医院は勉強会の中から解き放つことを共に考えていく段階です。
最も「達成感」のある時期です。ただし注意も必要です。この時期にあんまり考えなしに開業して、1〜2をさまよう人生を歩むことになっている先生も一定数いることも事実です。本当に自分の実現したいことは何なのかをよくトップ・理事長・院長と相談しましょう。
6.歯科医師としての自己超越の欲求
他者に喜んでもらいたい、社会をより良いものにしたいなど、自分のエゴを超えて他者・社会のことを想う欲求です。まだピンとこない先生もいるかもしれませんが、最近ここに意識をもつ先生が増えてきていることも実感しています。
(1)歯科医院や組織内で、自分の歯科医療・得意分野を、後世や後輩に伝えていっている状態。
(2)歯科医院内で、価値のある仕事を出来る仕組み構築している状態。
(3)歯科医師会を通じて地域医療に参画し社会貢献している状態。歯科スタディーグループを主催・発信し歯科界に貢献する。歯科医療ボランティアに参加する。
(4)自分の満たされたものを、周りの人にも還元していく状態(寄付・ボランティア・財団作る)
キーマンは自分です。どのような形でも、なにかしらの長になっている状態です。本当に自分がした貢献はなにか。とことん向き合って行く状態です。
最後に
以上、マズローの欲求5段階説+1の側面から、
一般的な開業医志向や、臨床志向のある、また仕事と生活のバランスを取りたいと願う、若手歯科医師が「一人前になる」ということ、その成長段階について見てきました。
これは、僕自身の成長にも当てはまり、今自分自身は6の段階を取り組んでいる状態です。そしてこれからは少しでも、医療法人志結会、大学教育、スタディーグループ、歯科医師会を通じて、多くの歯学部生・歯科医師、地域に貢献できるように取り組んでいます。
医療法人志結会でも、研修歯科医や若手ドクターが2.3を実現できるように環境を整えたり、更にレベルアップをしたいドクターが3.4を実現できるように取り組んでいます。
歯科医師の仕事は本当に楽しいです。
患者さんとの治療の応対も、
専門医を目指して臨床を追求することも、
新たな診療器材の導入・活用、
歯科医院マネジメントも、
歯学研究に携わることも、
歯科医師会を通じて社会貢献していうことも、
教育も、
仲間とディスカッションすること
家族との時間も。
今、必死に勉強していたり歯学部生さん、将来どうしようか悩んでいる研修医さん、これからどんなキャリアアップをしようか模索中の勤務医をされている先生。ぜひ多くの歯科医師の先生に、歯科の仕事とその先にある楽しさを知ってもらいたいと思っています。
もし今回の内容に興味を持たれた歯学部生・若手歯科医師の方は、ぜひ僕までFB,インスタ、HPよりメッセージをください。
卒後10年目までのドクター月3名まで限定で、個別のキャリアコンサルティングを無料で行っています。
少しでもこれからのあなたの歯科医師人生に協力できたらと願っています。ありがとうございました。