理事長ブログBlog

8172023
臨床・症例について

歯学部生・研修医・若手歯科医師必見!「エビデンスピラミッド」とその項目について解説

ここを見に来てくれている方の多くは、歯学部生さんと研修医さんのようです。

検索ワードをみていると特に「エビデンス、EBM、EBD」から来ているようですね。今日は重要用語のエビデンスピラミッドについて記してみたいと思います。

皆さんは「エビデンスピラミッド」という言葉を聞いたことがありますか?

これは、医学的エビデンスの質を示す概念の一つで、

どの情報源が信頼性が高いのかを示しています。

世の中には数多くの論文があるのですが、実は形式が決まっています。そして、その分類を知ることで、どの論文を重要視したらいいのかが分かるんです。

このピラミッドは、最も信頼性が高い情報源から低いものまで、階層的に配置されています。

1がもっともエビデンスが高いモノになります。

1. システマティックレビューとメタアナリシス

2. ランダム化比較試験 (RCT)

3. コホート研究

4. ケースコントロール研究

5. 横断研究

6. 専門家の意見

それぞれについて見ていきたいと思います。

1. システマティックレビューとメタアナリシス

エビデンスピラミッドの頂点に位置するのが、システマティックレビューとメタアナリシスです。

  • システマティックレビュー:複数の研究結果を系統的に収集し、その質を評価して結論を導き出す方法です。単なる文献レビューとは異なり、厳格な基準に基づいて行われます。例:歯周病の治療方法に関してのシステマティックレビューなどがあります。
  • メタアナリシス:システマティックレビューで収集された研究の結果を、統計的にまとめ直す方法です。こうすることで、小さな効果も確認することができたり、研究間の差異を調査することが可能となります。

これらは、多くの研究データを統合的に評価するため、最も強力なエビデンスとされます。

ガイドラインもこの内容に準拠しています。まず若手歯科医師は、ここを押さえるようにしましょう。世界水準の治療をするための必須条件になります。

2. ランダム化比較試験 (RCT)

次に、RCTがきます。これは、被験者を無作為に分け、介入群と対照群を作成して比較する研究方法です。

無作為にグループ分けされることで、各種のバイアスの影響を最小限に抑えることができます。特に二重盲検化されているかが重要です。

RCTは、新しい治療法の効果を評価する際のゴールドスタンダードとされています。

例:垂直性骨吸収を有する中等度歯周病患者において歯周組織再生療法薬剤リグロスを、歯周外科治療と比較し治癒を評価する。

若手歯科医師は、この結果をよく把握しておきましょう。今後の治療のゴールデンスタンダードになる可能性があるからです。

3. コホート研究

コホート研究は、特定のリスク要因を持つ人々と持たない人々を比較し、その後の発症率などのアウトカムを追跡調査する方法です。

前向きに行われる場合と、過去のデータをもとに後ろ向き(過去から現在にさかのぼって)に行われる場合があります。

この方法は、RCTに比べてエビデンスの質は低いとされるものの、現実の医療現場や公衆衛生の問題を評価する際には非常に有用です。

4. ケースコントロール研究

ある疾患を持つ人々(ケース)と持たない人々(コントロール)を選び、過去のリスク要因やエクスポージャーを調査する方法です。主に、希少な疾患のリスク要因を調査する際に利用されます。

5. 横断研究

ある時点での人々の健康状態やリスク要因を調査する方法です。これは、疾患の有病率やリスク要因の分布を知るための方法として利用されます。

6. 専門家の意見

この階層はエビデンスの質としては最も低い部分に位置しますが、経験豊富な専門家の臨床経験や意見は、特定の状況下で非常に有用である場合があります。

若手歯科医師が技術を習得するのに価値があると思います。CR充填のテクニック、フラップ手術のテクニック、インプラントの埋入テクニックなどなど。細かいTipsは、1〜5の論文ではほとんどわかりません。

まとめ

エビデンスピラミッドは、情報の信頼性やエビデンスの質を判断するための参考として役立ちます。

歯科特有の事情ととして、6専門家の意見が大きな影響を持つことがあります。これは、技術職であり、治療がテクニックセンシティブな側面があることも一因だと思います。

技術の習得やレクチャーは専門家に聞く・実習を行うことは重要だと思います。そうしないとエビデンスを活用できないですからね。

治療材料の撰択、治療方針の撰択に関しては、エビデンスの質を考慮して決定していきましょう。

医療従事者として、エビデンスの質を正しく理解し、それに基づいて治療選択を行うことが、質の高い医療を提供する上で非常に重要になっていきます。

少しでも歯学部生、研修歯科医師、若手歯科医師の参考になれば幸いです!