理事長ブログBlog

512024
日々のこと

【若手歯科医師向け】従業員ゼロで開業する方法 質を担保し、生産性の高い診療システムを構築する方法について(思考実験)

人口減少社会。超高齢社会。生産年齢人口の減少。日本は未曾有の時代に突入してきています。

そんな中、1人歯科医院開業が一部で注目を浴びています。好き好まざる関係なくそういう状態で診療しないといけない状況が出てきています。時代は急激に変わっています。

歯科界では、歯科医院経営の、2極化が進んでいます。多くの人員を抱える歯科医院や医療法人はさらに大きく、人数の少ない歯科医院はさらに人が集まりにくくなっています。

では、人数の少ない歯科医院が悪いのでしょうか??

私はそうは思いません。

今日は以下の内容をシェアしたいと思います。

歯科医師として開業して、心穏やかに診療をして、患者様へ良質の医療を提供し患者様から感謝され、少人数制で高い生産性を上げて、歯科医院を成功させることを考えていきます。

志結会の勤務医が将来開業・継承するときに、あらゆる状況に対応できたうえで開業が出来るようにと考えて、今回の内容を記します。

 

内容

1.はじめに

2.ゴール設定

3.医院運営のポイント

3-1.ヒト

3-2.モノ

3-3.カネ

3-4.情報

4.診療上のテクニック

5.最後に

 

 

1.はじめに

開業されている先生は、スタッフのことで悩んでいないでしょうか??

歯科医師会やスタディーグループ、同級生、多くの歯科医院の院長先生から聞くのが、スタッフの求人が出来ない、スタッフがいなくて困っている。スタッフが辞めたけど次の人がいない。もうスタッフ無しで1人でやって大変、、、、、、などなどスタッフ問題に関して、聞かない日がありません。

従業員を採用することは、ある一側面では、専門化、効率化ができますが、絶対的な人件費がかかってきます。2024年には現在よりさらに従業員の不足が深刻化しています。これは、歯科業界のみならず日本経済全体に言えることです。

歯科においても新卒歯科衛生士の求人倍率は20倍を超えています。人件費も高騰の一途をたどっています。都心部では、初任給30万円を超えることもあります。これに賞与や保険・年金・交通費など考慮すると、1人あたり40万円を確保しないといけません。

歯科助手を募集すれど、以前は1回の求人をかけたら10人面接に来たのに、今は10回かけても1〜2人面接にくるかわからない。失業率も過去最低を更新しています。働こうと思ったら非常に多くの職場をさがすことができる時代です。働き手にとっては恵まれた環境ですが、歯科医院側としては非常に採用難の時代です。

今後の開業は、さらに、人材確保が難しくなります。良い人が採用できなかったり、雇ってもすぐ辞めたり、採用の困難が続くでしょう。これは時代とともに深刻化していくでしょう。

この流れを止めるには、外国人労働者を受け入れるか、定年のさらなる延長、出生率の上昇が必要ですが、それらの改善は1歯科医院では難しいのが現状です。

そこで、1歯科医院、1歯科医師としてできることを考えてみたいと思います。

ここでは、逆転の発想で、従業員を雇わず1人歯科医師で開業することを検討してみたいと思います。

 

1人歯科医院をするメリット

(1)開業医の多くを悩ませる従業員のストレスがゼロになります。

(2)採用活動から解放されます。

(3)歯科医院で多くを占める人件費がなくなります。高い利益率を維持できるようになります。

(4)診療に関するクオリティーと量のすべてを自分のコントロール下でにおくことができる。

 

1人歯科医院のデメリット

(1)歯科医院のすべてを把握する必要がある。

(2)先駆者が少ない。情報が少ない。

(3)徹底した効率化を意識しないと、時間が無くなる。

(4)取得できない施設基準が出てくる。

では、1人歯科医院では、実際のところどれくらいの診療と生活ができるでしょうか?ここでは歯科医師のライフプランニングを考慮したゴールを設定してみたいと思います。

 

2.ゴール設定 歯科医師のライフプランニングを元に。

スタッフゼロで豊かな診療をするためのシュミレーションをします。

人件費ゼロ、スタッフ・ヒトのことで悩むストレスがゼロになりその分診療に集中することができます。患者様にもスムーズに対応することを目指します。

1人歯科医院の成立を目指すために。。。

経常利益が3000万円になることを目指します。これで、半分が税金1500万として納税します。年間の税引き後利益1500万つまり、月120万円の利益を目指します。

正直、スタッフが多くて、医院の売上があがるが、同額の医院への利益が残らないケースもたくさん見受けられます。この数字が1人で確保できるのであれば、良いでしょう。

月120万というとすごく見えるかもしれませんが、このあと借金の返済がかかります。

利益から、借金の返済となります。つまり開業費や継承のためのリフォームの費用が差し引かれます。継承・リフォーム代4000万として、10年で払うと、1年400万。1ヶ月約35万。120万ー35万=85万。

こんなにもらってるんだったらめっちゃいいやん!!てかこんなにいらないよ、、、って思った人甘いです。案外

そう、ここでライフプランニングを考慮する必要があります。

ここで歯科医師における基本的なライフプランニングを考えてみましょう。

条件は、(1)結婚する、(2)子どもは2人、(3)自分が受けた教育を、子どもにもさせてあげる。(4)自分の持ち住宅を持つ。

この4条件は、決して高い水準では無いと思います。

夫婦。子ども2人。子どもが希望すれば歯学部か医学部にも行かせてあげたい。それではどれくらいの生活費・教育費・老後資金が必要になるのでしょうか??

結婚して子育て2人私立歯学部や私立医学部に入れるとなると5000万円×2。1億円。

住宅立てて6000万円。

老後の資金2000万×夫婦2人分。4000万円。

トータル2億円の貯蓄が今後65歳までの間に必要になります。

今40歳としてここから65歳までの25年間でこれを成立させる必要があります。

年間800万ずつ貯蓄していく。つまり1ヶ月あたり約67万円です。

 

なかなかの金額ですね。

 

そう、結婚をして、マイホームを持ち、こどもを2人育て、自分と同じくらいの職業にはつかせてあげるという普通の堅実な範囲の結婚生活を成立させようとすると、これくらい必要になるんですね。

 

当然、何かをここから削っていったり、他へ負荷をかけることも可能です。もっと前から検討することで月あたりの負担も減ります。

郊外で中古物件を安く探すということも検討することも良いかもしれません。

学費を減らすために、小学生低学年から塾・私立の中学・高校に行ってもらい、国立歯学部・医学部をめざすというチャレンジも可能です。これができれば、塾代・私立中高、国立大学費用で、2000万円×2人くらいに抑えられるでしょう。

しかし、決して贅沢なゴールではないと思います。ぜひひとつの目安にしてください。

3.医院運営のポイント

上記の家庭生活を成立させるために必要になるポイントを、ヒト・モノ・カネ・情報の観点から具体的に列挙していきたいと思います。

 

3-1.ヒト

原則、院長である歯科医師1人でオペレーションを構築します。

ポイントになるのは、2つです。

(1)徹底的な無人オペレーションの構築。

また、(2)アウトソーシングし、外部リソースの最大限活用です。

予約は、電話はおかずに、ウェブ予約のみ。

技工も外注で技工士さんに行ってもらいます。

事務もオンライン事務代行。

シルバー人材派遣センターも活用します。

レントゲンやレセコンなど、各種歯科医院で使用するサービスは最大限、サポートを受ける。遠隔サポート対応してくれるサービスを使用する。

会計は自動釣り銭機。

診療後の予約は、時期を伝えた上で、患者様にスマホで自分自身で取ってもらう。

ここのあらたにかかる費用は、サービス利用料として経費に入れます。

 

3-2.モノ

1人歯科医師による歯科医院経営が成立するために必須のモノがあります。

(1)無人精算機。

(2)ウェブ対応予約システム。

(3)排唾管。

(4)消毒のために、余裕を持った診療機材数。

(5)余裕を持ったチェアー数。チェアーが押しても、対応できるように少なくとも5台あると望ましいです。

(6)もしもの時に対応してもらいやすい材料屋さん

 

3-3.カネ

1人歯科医院の成立を目指すために。経常利益が3000万円になることを目指します。これで、税金が1500万。月120万円の利益を目指します。

今回は医師優遇税制は考慮しません。これは、いつ無くなってもおかしくないからです。

経費をここでは概算でます記します。

家賃10%、

材料代10%、

技工代10%、

金属代5%、

各種サービス・通信費・光熱費5%、

将来への投資費10%

として、合計の経費が50%となります。

そして残りの50%が経常利益として年3000万円確保できるように目指します。

つまり、年間医業収益6000万円があれば、50%で年3000万円確保できます。これは1ヶ月あたりだと、、、月500万円の月間医業収益を上げられたらこの水準に到達します。

そうしたら、毎月のこの経費の内訳は、、、

家賃10%=50万

材料代10%=50万

技工代10%=50万

金属代5%=25万

各種サービス・通信費・光熱費5%=25万

将来への投資費10%=50万

どうでしょうか?現実的な数字になってきたのでは無いでしょうか?

 

3-4.情報・仕組み。

もっとも重要になるのは、情報と仕組みかもしれません。1人歯科医院を成立させるためには、情報や院内仕組みのアプデートへのアンテナを張る必要があります。1人診療をしていると、院内で他のメンバーと話すことがなくなります。

同じ形態で開業している情報感度の高い歯科医師のネットワーク、歯科医師会、スタディーグループ、オンラインサロンへ、つねにつながるようにしましょう。

ポイントになるのは、あくまで、自分の医院へプラスになるかどうかです。

仕組みとして必要になるのは、最大限外部のリソースを活用していくことです。

意識してほしいのは、「攻めの、超少人数歯科医院経営」です。人がいなくて困っている、という状態から、人がいなくてシンプルにストレスフリーで開業するための攻めの無人歯科医院です。

受付は無人化。

診療は、2ハンドテクニックをマスターしていく。

電話は無し。全てオンラインにて予約対応。ホームページに電話番号は記載しない。

消毒滅菌の委託も活用。

電子媒体へのメモの入力の活用。音声入力を使用。

予約はチェアーサイドで、精算は自動釣銭機で行う。

シルバー派遣も検討。地域の高齢者で働ける人材の活用。

事務に関しては、オンライン事務代行も活用。

高い診療クオリティーと効率を追求するために以上のものはどんどん取り入れましょう。

 

4.診療上のテクニック

2ハンドテクニックが必須になります。受付もアシストも歯科衛生士もいません。すべてを自分で行っていきます。

保険診療の目標は1時間に5人対応できることです。4人の基本診療と、1人を緊急対応できる体制です。

基本の診療時間は1人15分。この時間内で、導入、ヒアリング、治療、レセコンへ治療入力、予約確定、会計へ回ってもらう。

長い治療が必要な場合は、個別に長い時間を設定。曜日を分けるなど配慮をします。

保険診療を想定すると、チェアー4台+1台で、15分以内で、1台使う。1時間で4人を対応。

麻酔待ち、印象硬化待ちを効果的に活用できるように、この時間で抜歯後の消毒をする、バイトチェックなどの経過観察を、2列目の診療枠に組み込む。

急患対応や消毒、簡単な義歯調整などは、+1台を有効活用する。

1時間したら、チェア4台+1台の片付けを一度にする。消毒滅菌は、キャンセルが出た時に順次行う(少なくならないように器材は余裕をもって確保しておく必要あります)

8時間診療で、1日32人。1人1回保険診療500点だとして、一日16000点。

週6日勤務で月25日働いたら、40万点。

自費率20%で自由診療が月に100万円。

月500万+α。これが一つの基準になります。

もっとも強いのは、自分1人だから、労働時間を気にしなくてすむことです。自分一人だから、自費診療は、診療後やお昼に行うことも可能です。自費コンサルなども、お昼休みや診療後に行うことで対応することが可能です。

 

5.最後に

今後、さらなる歯科医院での、従業員の確保が難しくなっていきます。この時代を乗り越えていくために、1人歯科医師診療所の価値は増していくでしょう。

悪い側面ばかりでなく、1人で診療が成立させられることで、生産性を究極まで高めることができます。

2040年問題にも対応がしやすい環境を歯科医院で構築することができるでしょう。

もしかしたら、従業員を採用することがあるかもしれません。

これからの時代において、従業員を採用する意味はなんでしょうか。

採用する意味がある、従業員を採用する価値があるのは、、、従業員に対しての価値を生み出している職場だけが、従業員を採用していくようになると思います。

それは、従業員を内部顧客とみなして雇用できる職場です。従業員のクオリティーを上げ生産性を高め、超高齢社会・人口減少社会の中で、価値ある人材に育成できる職場、社会へ価値を還元することへコミットメントできる歯科医院は、従業員の雇用を続けて行くことができるでしょう。

地域に、価値のある雇用を創出することは、地域貢献になります。人材の育成にも繋がります。

志結会は、従業員の採用は、価値のある雇用を創出することを目指しています。つまり、歯科医師が、認定医も取得し、開業しても自己実現ができ、地域貢献できる力を身につける。歯科衛生士が、認定衛生士も取得し、自分のパフォーマンスを上げていき、地域での口腔の予防、機能管理に主体的に関われる。歯科助手が、価値を高め、歯科衛生士や、トリートメントコーディネーターや、事務局に勤務することができる、キャリアパスを辿れる。

一人ひとりの、生産性を高める、価値を創出できる人材の育成に主眼をおいています。

今後、従業員が少ないことは、むしろメリットといえるかもしれません。2024年。時代の変革のまっただ中です。歯科医院従業員になりうる労働生産人口はさらに減少をたどります。

歯科医師1人で開業出来る力を身につけることは、むしろこれから求められるかもしれません。

今回のこの内容が、開業を見据えた若手歯科医師や、開業してスタッフトラブルで困っている開業間もない先生の役に立てればと思い、記載しました。

開業を見据えた先生は、歯科医師人生に起こり得る、すべての可能性を考慮して、自分の技術研鑽を積んでもらえたたらと思います。今後20年、スタッフがいないと仕事が出来ない歯科医師が開業時に、非常に不利になる時代に突入してきています。

時代の流れをくんでの診療を考えてもらえたらと思います。

 

今回は、思考実験として行いましたが、このような流れを選択肢として真剣に考える時代がくると思います。

すこしでも興味を持たれた方は、ぜひ感想、コメント、メッセージをいただけたら嬉しいです。