理事長ブログBlog

3182024
日々のこと

【研修歯科医向け】「大学院での歯科バイトで困らないための、研修歯科医時代の過ごし方」

「大学院での歯科バイトで困らないための、研修歯科医時代の過ごし方」

大学院生の時に、一般歯科バイトに行くときに困らないようにするために。研修医のときからどのようなことに取り組んで、外の診療所での研修をすると良いか。

大学院生で、一般歯科医院での診療を行いにいくことがあるでしょう。

生活費や大学院学費を得るために、外の診療所でバイトをすることが多いです。

では、その時に必要なスキルは何でしょう?

志結会では、勤務医向けに、5年で開業して成功するために診療において以下のことが出来るように伝えています。

0:医院理念、7つのビジョンを日々実践していくこと

(1)保険診療で、保険で求められる質の高い治療を1時間で5人以上に提供できるようになること。メタルフリー。教科書的な成功率を上回ること。

(2)自由診療まで選択肢を広げ、臼歯部インプラント治療、1級の矯正治療、1歯単位の審美性の高い補綴治療ができること

(3)自分の診た患者様を生涯診るために訪問歯科診療が実践できること。

0〜(3)は優先順位でもあります。

研修歯科医師向けに、研修医時代に歯科医師としてどのようなことが出来るようになっておいたほうが良いかをお伝えします。

また、一般歯科医院でバイトをする際に必要な診療への姿勢と技術について記載します。

研修医時代の過ごし方と、バイトでの入職前の心構えについて記します。

私も、大学院の時に、診療バイトに行った時に困ったり、注意を受けたり、気をつけたポイントがありますので、今回はその内容をお伝えします。

 

<大学とアルバイト一般歯科診療所での仕事環境の違い>

(1)診療に集中する。1時間に3~5人診る。

(2)そのために、診療に集中する環境になる。

(3)アシストがいることがある(原則2ハンドです。機材を用意してくれています。4ハンドは、外科処置、自費治療などの場合です。)

(4)自分での瞬時の判断が必要になる。

(5)急患対応など、総合的な判断ができる必要がある。

(6)DHやDr、DA、他の職種との連携が密である。

(7)診療での成果を求められる

(8)ホスピタリティが求められる

それぞれ見ていきましょう。

(1)診療に集中する。1時間に3~5人診る。

これがもっとも大きな違いに感じるでしょう。

給料をもらうために、どんどん診療をしていくことが求められます。

(2)そのために、診療に集中する環境になる。

基本的には、多くの診療に集中するために、採用されています。一人でも多くの患者様の診療に当たりましょう。

(3)アシストがいることがある(原則2ハンドです。機材を用意してくれています。4ハンドは、外科処置、自費治療などの場合です。)

大学病院だと、基本1人で準備、治療片付け、予約を取る、となるでしょう。

一般診療所での診療は、準備や片付けをしてくれることが多いです。ときには患者様の誘導をしてくれることもあるでしょう。

診療に関しては、2ハンドテクニックを行いましょう。先生が、インプラント治療、再生療法、歯周形成外科など高度な治療をするときは、4ハンドテクニックを用いることもあるでしょう。

(4)自分での瞬時の判断が必要になる。

すべてが、時間との勝負です。大学病院での10分と、開業医での10分は違います。開業医では、5倍のスピードが求められると思っていてください。瞬時に判断しましょう。その精度を挙げましょう。迷っている時間はありません。

そのためには、術前の準備が非常に重要になります。カルテチェック、他のDr、DH、DAとの連携など、診療業務に入る前に、入念に準備をしておきましょう。

一般歯科診療所での診療は、たとえば、医科の病院での救急外来だと思って、いいでしょう。

(5)急患対応など、総合的な判断ができる必要がある。

歯内療法だけしたらいい、抜歯だけしたらいい、ではなく、1歯、1口腔、1患者様の背景を知り、適切に治療への判断が必要になります。

大切なのは準備と日頃からの思考トレーニングです。

(6)DHやDr、DA、他の職種との連携が密である。

診療所では、リアルタイムに、DH、Dr、DA、その他職種との連携が必要になります。そしてその関係は職業による貴賤はなく、対等の関係です。

(7)診療での成果を求められる

アルバイトに行く=給料を稼ぎに行く。診療実績・診療点数を求められます。勤務医への割合は15〜20%が一般です。たとえば、あなたが、1時間で1000点分の診療をすると1500〜2000円がもらえます。あなたが15分で2000点分の診療をすると、15分で3000〜4000円もらえます。あなたが、1時間で50点分の診療をしたら、75円〜100円もらえます。現実的には、固定給のことも多いと思いますが、医局長や部長・副院長・院長からは、つねに考えられています。

(8)ホスピタリティが求められる

大学には大学だからというブランディングがあります。

一般診療所では、1歯科医師のウェイトが大きくなります。あなたの対応の一つひとつが、大きな影響力をもちます。診療だけするのではなく、患者様への配慮、心配りが重要になります。

 

<ゴール設定>

研修医の3か月終了時に最低限できるようになること。

30分で患者様に満足して診療を終えられること。

 

<具体的目標>

コミュニケーション能力: 患者さんやスタッフとの信頼関係を築くため、明確で優しい説明や声がけが重要です。言葉遣いや表情も大切にし、安心感を提供しましょう。

一般歯科診療所での診療は、大学病院以上に、信頼関係が重要視されます。大学病院であれば、大学で診てもらっているから、という部分で許されているとこもあります。

スタッフとのコミュニケーションも非常に重要になります。また、歯科診療所は、大学病院のように何十人、何百人もスタッフがいるわけではありません。数名から多くて数十名までの組織であることがほとんどです。研修医時代から、一人ひとりのスタッフの名前と関心のあることを覚えるようにしましょう。

志結会では、それが実現できるために、患者様に対しての、問診票が揃えています、確認しましょう。各スタッフ名札、年間目標のシェアをしているのでよく読んで覚えましょう。

基本的な治療技術: 虫歯治療や根管治療などの基本的な技術は必須です。日々の臨床で最も頻繁に行うため、確実な技術を身につけることが大事です。

診査診断手技です。もっとも必要なのは、質の高いスピードです。正確さです。診療時間中に迷っている時間はありません。

保険診療においては、10の手技を優先的に、30分以内(15分以内ならなお良い)で出来るようになりましょう。ここに優先順位の高い診療を記載します。

  1. 2本を30分以内でできるようにCR充填。
  2. インレー形成:20分で、浸麻(表面麻酔、浸潤麻酔、大臼歯の場合、歯根膜注射)、インレー形成、Gコーティング、印象、仮封を終わらせましょう。
  3. 抜髄、感染根管治療、拡大、根管充填。大臼歯抜髄は30分×3回以内。前歯・小臼歯は、30分1回以内を目指しましょう。2回目に浸麻をしなくていいところまで歯髄を取りきることが、ポイントです。
  4. 義歯作製。印象、バイト、試適、セット。調整。特にトラブルになるのは、咬合採得の水平的なずれがある場合が多いです。
  5. 残根抜歯。麻酔の効いた状態から10分以内で抜きましょう。そのためには、舌や頬の保護、肉芽除去、歯根膜腔の明示、1発でヘーベルを引っ掛けて抜歯終了。ヘーベルスペースがなければ残根をタービンで切削しヘーベルスペースを作成して、一発で抜けるようにします。無理であれば、頬舌的に歯牙にタービンでスリットを入れて、ヘーベルで分割抜歯しましょう。ゼクリアバーは研修医では危ないので使用をしないようにしましょう。
  6. 抜歯後の消毒:5分。異常出血、術後感染の有無を確認。患者様に安心してもらう声がけを心がけましょう。
  7. 義歯調整:5分。手を動かす、施術は、5分です。2回の調整で痛みの改善をしましょう。傷がある場合、傷の回復まで疼痛や違和感があることをあらかじめお伝えしましょう。治療以上に、患者様とのヒアリングが重要になります。アシスタントに十分ヒアリングをしてもらってから施術にはいりましょう。
  8. クラウン形成・印象。
  9. Tek作成。30分で行いましょう。
  10. 小児のセメント充填、小児のメインテナンス

アルバイトでなければ、CAD/CAMスキャン、設計、ミリング、フェイスデータ統合、矯正分析なども入ってきますが、今回は歯科医師アルバイトにフォーカスしているため、省略します。

診療時間中に迷わないために、事前にカルテをチェックして、不明点は、前日までに、先輩ドクターに確認をしておきましょう。

緊急対応能力: 急患対応では迅速かつ冷静な判断が求められます。3分で原因を突き止め、速やかに対応します。歯科医院での救急対応が必要なケースは実はほとんどが決まったものになります。

緊急時のプロトコルを理解し、慌てずに対応できるよう準備しておきましょう。

痛みを伴うもの。急性化膿性歯髄炎、急性化膿性根尖性歯周炎、咬合性外傷。歯肉膿瘍or歯周膿瘍。顎関節症。外傷。

臨床に即した知識の習得: 歯科医学は進化しています。最新の治療法や材料についての知識は、質の高い診療に直結します。学び続ける姿勢が重要です。

しかし研修医明けに、一般歯科診療所で必要になるのは、基本的な知識を瞬時に、自分が手を動かせるレベルで身につけることです。研修医明けのマインドから、GPでアルバイトに出るのは、ERで対応していると思って、取り組んでください。

国家試験で求められるような細かい知識ではなく、実際に手を動かせる、判断をできるようになるための知識です。

「縄跳び」にたとえてみます。

これまでの国家試験の勉強は、縄跳びの各部位の名称、縄跳びの歴史、縄跳びの跳び方の種類を覚えてきたようなものです。

診療をするための勉強・知識というのは、、、二重跳びを100回飛べるようになることです。そのためになにが必要か考えることです。持ち手のどこを持ったら二重跳びが飛びやすいのか。ジャンプはどれくらいの強さで飛べばいいのか。100回跳ぶためにはどれくらいのペース配分をしたらいいのか。どれくらいの自主練をしたらいいのか。考え、取り組んでいくことです。

患者様への配慮: 痛みへの配慮や患者さんの不安を和らげる工夫は、診療の質を高めます。患者さん一人ひとりのニーズに応じた対応を心掛けましょう。これに関しては、別ブログに、術者として実践する患者様への配慮を記していますので、よく読んで実践してください。私自身も日々気を付けています。

精神的に安心してもらえるように心がけましょう。

具体的項目を記します。すべて行いましょう。

1分おきに声がけをしましょう。自信は、手先、声色、視線から患者様に伝わります。自信をつけるには、練習あるのみです。

口腔内の水を全く貯めないようにしましょう。

1回の診療で患者様の名前を3回以上呼びましょう。

診療についてのフィードバックを受けましょう。志結会では、全患者様へのアンケートを実施しています。

笑顔で導入・お見送りをしましょう。

ため息つかない、舌打ちしない。器具を投げない。

診療にハマって、テンパったときこそ、一息つく。

時間管理能力: 質の高い保険診療を、効率的に行います。効率的な診療スケジュール管理をすることで、患者さんを待たせず、スムーズな診療を実現します。時間管理を徹底し、患者さんに快適な診療環境を提供しましょう。

時計の分針・秒針を常に意識しましょう。

先輩ドクターの手を止めずに、自分一人で30分で診療できるようになったら、最低限バイト先でも一応迷惑をかけません。バイト先でも、戦力として、貢献できる、給料アップの交渉をするのは、もっと患者様を診れるようになってからです。

以上のポイントは、大学院生が、一般歯科医院でのアルバイトを行う際に、特に重視すべき項目です。これらを心掛けることで、より良い診療が提供できるでしょう。

 

 

<おまけ(1) どれくらい働いたら、どれくらいの給料をもらえるか>

診療をするという行為は、聖なる行為であり、清く正しく、診療を追求すべし、という側面あります。医業に論じるなんて

しかし、診療バイトに出かけるとき、その多くは、大学院での生活費や学費を得るため、給料を得るためという現実的な側面もあることも理解しています。

アルバイトドクターとして、お金のことを交渉する時には、自分の診療実績としての保険点数などお金のことを交渉材料にする必要があります。

ただ、給料が低いからあげて、とか上げてくれない、というのは、歯科医師としての前に、社会人として、失格です。

給料や時給を上げてほしければ、自分がどれくらいの生産性をあげるかを伝える必要があります。よく聞くのが、保険診療において、丁寧な診療をしているから、給料を上げて欲しいという先生がいますが、それは不十分です。

給料を上げてほしいなら、(丁寧な診療は当たり前で)質の高い診療を多くしてこれくらいの診療人数を診て、これくらいの診療点数を出しているので、これくらいの給料にしてください、というのが正しい交渉です。もっと言うなら、月に名の私の紹介患者様が来てくれて、診療実績として点を今月施術しています。などなど。

では、どれくらいが給料交渉の目安なのか、これも若手歯科医師からよく聞かれます。日本の歯科医院での、歯科医師の人件費は、15%〜20%です。

つまり、1時間で10万円分の診療をすれば、自分の給料は時給1万5000円から2万円くらいになります。

1時間で1万円分の診療をすれば、自分の給料は時給1500円から2000円くらいになります。

自分の診療パフォーマンスを上げましょう。「迅速かつ丁寧に」です。

自分の適正時給を把握して、前向きに、提案をすることをお勧めします。

それより高い提示があるところは、よっぽどの関係性があるか、指導医や臨床教授などの実績があることを除くと、なにかあることがあります。

 

<おまけ(2) 保険診療と自由診療では、求められる質が違う>

誠心誠意取り組む、ベストを尽くす、医療者としてこれは当たり前です。

正義感を振りかざして、保険医が自由診療を保険診療で行う、これはよくありあせん。

 

保険医と、自由診療医を区別しましょう。保険医で自由診療のようなことをすることは、経済的合理性が破綻していて注意されます。

自由診療を行う際は、高い診療技術、それを裏付けるエビデンス、自己の研鑽、実際の時間の確保、適切なFeeをもらうを行いましょう。

自分の時間・質・診療種類という、診療パフォーマンスを意識しましょう。

自分の技術力を高め、適切なFeeもいただきましょう。

保険診療では、保険診療として、求められる診療水準があります。

また自由診療では自由診療で求められる診療水準があります。

保険診療では、療養担当規則や、論文で出されている平均的な水準を満たすようにしましょう。Perでの5年予後は約50~70%です。補綴物維持管理料の期間が2年です。義歯の作成に特段の理由がない場合は6か月間は作成できません。これらは満たせることが求められます。

自由診療では、さらに求められる水準があがります。当然そのため時間と設備のリソース、研鑽を積んでいます。インプラント治療の場合、5年予後下顎で97%以上。審美修復の補償は医院ごとで規定が決まっていいると思います。

最後に。(自分や家族の生活を成立させるために)お金のために働くなら、診療実績を出しましょう。決して悪いことでありません。

お金のためでない(=無給でのボランティアや、無給で勉強させてもらっている)なら、100%知識・技術・マインドを吸収しましょう。

けっして手をぬけと言っているのではありあせん。求められる水準を意識しましょう。

あなたが、研修医明けに、大学院へ進学したときのGPアルバイトへ理解をしてがしっかりと診療ができることを願っています。